2019年 01月 24日
腕とArms |
文明開化以降の「美術評論家」はエキゾチシズムだの構図だのと、見当違いのことを仰いますが、当時版画といえば黒一色で、多色刷りの版画など目にしたことがなかったのに、東洋神秘の国では、場合によっていは20版30版という凝ったものを、今でいう「毛抜き合わせ」で擦り上げる技術と、それを庶民が買える手頃な値段で売られている事に驚嘆しことにはあまり気がついていないようです。
幕末明治に日本を訪れた外国人が等しく驚嘆しているのは「なんでも人の手で作ってしまう国」というものです。
日本で「腕」というのは職人の専門的技能を指すのですね。最近でいえば宮崎駿に代表されるアニメーションスタジオも、浮世絵の版元と同じように「腕で食う」システムでしょう。これと対照的なのがウォルト・ディズニーの世界ではないでしょうか。天才ウォルト・ディズニーが率いていた時には素晴らしい作品を次々と生み出していたスタジオが、ウォルトが死ぬと次第に精彩を欠き、次の天才ピクサーに制作を委ねることとなり、利権販売の商社になり下がっています。
デークと話していて、この30年で大きく変わったのは「手で考える」世界が追い詰められていることでした。30年前にはまだ大工の世界にはまだ「手で考える」部分が大きく、ものを作る喜びが残っていましたが、次第にハウスメーカーで「言われたことを言われた通りにやる」場面が増えているようです。
米国では都市計画法の中で地元で決めることが大きいためか、全国メーカーというものはありません。ところが日本のハウスメーカーは技術的には「欧米の先進技術」を取り入れつつ、オペレーションは北米のハウスメーカーというより自動車メーカーに近い身ごなしではないかと思われます。そこではどうも「手で考える」ことはご法度で、「言われたことを言われた通りにやる」ことで住宅が作られているようなのです。
一昔前に 「2007年問題」 として騒がれた熟練工の退職問題も、日本が「腕で食う」国ではなくなってしまう、というのがテーマだったと思います。文明開化以来、欧米の技術を取り入れて産業近代化ができたのも、日本で「腕」というのが職人の専門的技能を指していたからでしょう。それが瓦解した時、果たしてこの国がやっていけるか心配です。
日本で「腕」というのが職人の専門的技能を指していたのと対照的に、欧米でArmsというと「武器・武力」を指します。実はこれが欧米の国家存立の基盤ではないでしょうか。ヘブライ教・キリスト教・イスラム教が等しく掲げる聖書は「出エジプト記」から始まります。脱走奴隷が武器・武力を手にして、新たな奴隷を作り出してきたのが欧米の歴史であり、近年の欧米への経済難民の流入は、搾取された奴隷が「借りを返してもらおう」という面があり、解決は難しいようです。
日本が「戦争をしない国」なのは、この国が戦争で成り立っていたのでなく、職人の腕で成り立っていたからなので、国家存立の基盤は平和なのです。「遠江国風土記伝」に残された坂上田村麻呂の記事からも、日本の主たる敵は某国ではなく自然災害であったことが伺われます。どうも「口だけシンちゃん」はその辺りがお分かりでないような、、、これで「保守本流」と言われてもねえ、赤色恐怖の赤尾敏先生程度ではないでしょうか。
そして日本でも「働き方改革」などと言いつつ、「腕で食う」国の歴史をかえりみず、米国経済同様、日本を奴隷制経済の国にしようという恐ろしいことが始まっている様です。昨年末改正の出入国管理法によって農業・漁業から介護・建設業・外食業に至るまで、外国人の単純労働を受け入れることが決まったのだそうで、これから先の日本に国際競争に勝つ道はあるのでしょうか。
これに「腕で食う」のとは違い、東アジアの儒教国に見られる
体を労するものは人に使われ
心を労するものは人の上に立つ
という科挙制度が結びつくと、さらに事態は恐ろしいことになります。大学入試で記憶力だけが異様に発達した、心を労せず考える力もないものが、役人を身分と勘違いし「国家公務員は金飯碗、省級公務員は銀飯碗、地方公務員は鉄飯碗」として平民の働きを食いつぶす中国と同じ未来があるだけです。
役人を身分と勘違いして年貢の配分しかしない失業者をお払い箱にして、デークと介護職員の日当を倍にすれば人手不足もありますまい。
帰国しなければならない奴隷を増やす一方で、結婚や帰国後の身の危険など人道上の理由から滞在を認める在留特別許可申請の人数が激減しているそうで、ますますこの国は鎖国へ進みつつあるようです。在留特別許可申請というのは、様々な理由から「日本人になりたい。」という人々でしょう。ダーリンがたまたま日本人だった、というケースもあるでしょうが、大坂なおみちゃんのパパみたいに、日本のファンもいるでしょう。これから鎖国根性を乗り越えて日本が世界に伍して繁栄するためには大きな力になるはずです。そうした人々を締め出す壁が分厚くなるというのは、未来の日本にとって決してプラスにはなりますまい。
by dehoudai
| 2019-01-24 19:08
| きせつ
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