2014年 02月 22日
Thirteen |
復員後の彼は「もうどうでもいいや。」という所があったようにも感じる。日本経済はやがて高度経済成長を遂げるが、その水源のひとつが朝鮮戦争とヴェトナム戦争であったことは否めない。1968年頃の横浜瑞穂埠頭からは、そうした高度経済成長の別の面が垣間見られた。
ミスターオカベは比較的米国に忠誠を誓うものの多かったミニドカ収容所から、442部隊に入隊するが、
「米国に忠誠を誓い、日本への忠誠を放棄するか-No」
「米軍に従軍する意思があるか-No」
という「ノーノーボーイ」は別の道を選ぶ。ミニドカはルース・オゼキの"All Over Creation"の舞台の近くでもある。
「13歳なら昔で言えば「元服」で。」ヘンリーの父はヘンリーを広東の学校に入れようとする。
ヘンリーは「13歳なら自分の道は自分で選ぶ。」と父と衝突しているが、自分とケイコ、そして家族よりも大きな「国家ナルモノ」に対する無力感を感じているようにも見える。
ヘンリーの父は日本の侵略に悲憤慷慨するが、V-J Dayの向うに国共内戦の、長い歳月が横たわっていることは想像していなかっただろう。
私の姉のマスコさん、つまり満州子さんは敗戦後家族とともに満鮮国境を越え、先日砲撃のあった延平島の辺りから「仁川行き」の漁船に乗り込むが、金を巻き上げられた上、軍事境界線の遥か手前の海岸に打ち捨てられ、飢えを凌いで徒歩で38度線を超えている。
世代の溝には様々な貌があり、乗り越えられない溝もあろう。老いとともに深まる溝もあろう。40年を経て巡り会うことが出来たヘンリーとケイコはある意味幸せだ。永遠に失われた、と思っていた若き日の自分に、臨終の床で出会えたシェルドンもまた幸せだ。
日本や中国の伝統では、家族に委ねられて来た介護が米国式に産業化し、世代の溝を深め「放置」から「痴ほう」を生み出している側面もあろう。
シアトルのV-J Dayも、ヘンリーの眼からすると「集団ヒステリー」の様にも見えるのは、私の先入観のせいだろうか。真珠湾攻撃の死者2,400人によって引き起こされた「集団ヒステリー」は日本人500万人余、米国人20万人余、アジア人2,000万人余の死者を残して終わっている。
田母神元将軍など、真珠湾攻撃自体が米軍の陰謀によって誘引されたものだ、との説を支持している様だ。この説に立てば、2001.9.11のWTC爆破テロの犠牲者2,700人も「集団ヒステリーを引き起こすための尊い犠牲。」と言うことも出来る。
何せ大方の米国人がケネディ暗殺は「リー・ハー・オズワルドの単独犯行」という連邦政府の報告書など信じていない、という恐ろしい国だ。
日系人の強制移住も西海岸のみで、ハワイには「戦時地域」の指定がなされなかったというのも、おかしな話だ。カリフォルニアの日系人には「真の目的は西海岸における日系農業・漁業の利権簒奪」という説を立てるものもある。それも今は昔話。
何せ「声の大きなものが勝つ」という国なので、今日も今日とて米ロサンゼルス近郊グレンデール市に、昨夏設置された従軍慰安婦の像をめぐり、在住の日本人らでつくる団体が、同市を相手取り、像の撤去を求める訴訟をカリフォルニア州の連邦地裁に起こしているそうだ。
日本国政府が問題から逃げているのを「集団ヒステリー連」につつかれているという筋書きは、何も変わっちゃいない。
先日来「ケネディ暗殺50周年」というわけで、自分の時代を振り返ってみたが、私などヴェトナムで「戦った」米国の同じ世代に較べれば、そしてヘンリーやノーノーボーイに較べれば、「平和な時代」を過ごして来ている。
ところが戦争を知らない世代の我々よりも、さらに戦争を知らない世代が煽り立てられて「集団ヒステリー」へと追い込まれて行く昨今の日本を見ると、日中両国政府からすれば尖角列島など「集団ヒステリーを引き起こすためのまたと無いネタ。」と映るのかもしれない。
ハワイ出身兵は"katonk”ではなく”buddha head”=「石頭」だと言うのだが、本土兵は「”butahead" に命令されたかあねえ。」とか言っていたという。
“Jii san”達、家族からの聞き書きなので実感がある。
私が知りたいのは、”buddha head”の語源だ。「お地蔵さんの石頭」なのだろうが、442部隊のハワイ出身日系兵士が何故「お地蔵さんの石頭」になったのだろう?
ヴォージュ山中の塹壕にうずくまった、戦友のヘルメットを見て「農兵節」を思い出したものが居たのではなかろうか、というのが私の推論だ。幕末混乱期に「農」を「兵」にしたので江川担庵が知られる。現在の三島市役所の敷地は江川の練兵場の跡地で「農兵節」の碑が立っている。
狭い日本から新天地を求めてハワイに渡った日系人、442部隊の兵士ではなく、その父親の代には農民が多かっただろう。「農」を目指して渡米したものが「兵」となる運命に出会い、口にしたのが「農兵節」ではなかったか。
「農兵節」の歌詞は「永久に続く」というのも、戦場の光景を思わせる。442部隊は”Go For Broke”のモットー通り、米国陸軍史上最多の損耗率を記録している。
富士の白雪ゃノーエ
富士の白雪ゃノーエ
富士のサイサイ
白雪ゃ朝日にとける
とけて流れてノーエ
とけて流れてノーエ
とけてサイサイ
流れて三島に注ぐ
三島女郎衆はノーエ
三島女郎衆はノーエ
三島サイサイ
女郎衆は御化粧が長い
御化粧ながけりゃノーエ
御化粧ながけりゃノーエ
御化粧サイサイ
長けりゃ御客がおこる
御客おこればノーエ
御客おこればノーエ
御客サイサイ
おこれば石の地蔵さん
石の地蔵さんはノーエ
石の地蔵さんはノーエ
石のサイサイ
地蔵さんは頭が丸い
頭丸けりゃノーエ
頭丸けりゃノーエ
頭サイサイ
丸けりゃからすが止る
からすとまればノーエ
からすとまればノーエ
からすサイサイ
とまれば十六島田
十六島田はノーエ
十六島田はノーエ
十六サイサイ
島田は情けでとける
とけて流れてノーエ
とけて流れてノーエ
とけてサイサイ
流れて三島に注ぐ
by dehoudai
| 2014-02-22 13:40
| ほん
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