2013年 01月 04日
澤村田之助 |
澤村田之助
矢田掃雲
報知新聞連載/大正12年
現代大衆文学全集
矢田掃雲集
平凡社/昭和3年
柳橋吉野家の千代吉姉さんが、千鳥の袱紗を膝にもの思いに耽っている。
矢田掃雲わ全集の小序に
「色模様」といったところで現今の少女雑誌の様に「一人えっちの仕方」「うれしい体位」など言ったものは当然含まれておらず、テレビのバラエティショウに較べても可愛いものだ。
然らば一部の君子人から、何を大いに叱られたかと言うと、当時は「世界最終戦争」と呼ばれた、第一次世界大戦のバブルから抜け切らず、増大する一方の軍事費によって"fiscal cliff"を転げ落ちて行く財政赤字に徴して、既に財政面から「非常時」は始まっていた。
加えて関東大震災によってPTSDに陥った国家統治の中枢は「精神論」を振りかざして「云う通りにしろ。」と国民を脅すしか無かった。「娘身売りの前に、村役場にご相談下さい。」と言ったところで、お上を当てにするものは無いまま「血税」で財政赤字を購う時代が来る。
それにもかかわらず、一部の国策に寄り添うもの達は、歌舞伎を楽しみ寿司をつまんで、座のはねた後の銀座通りのそぞろ歩きを楽しんでいた。仙台の飲屋街に於ける、昨年来の賑わいは全く変わっておらない様だ。今日の新聞では大間のマグロに1億5000万の値が付いたとやら。
笠松紫郎の刷り物には2.26事件に連なる、こうした時代の精神を活写した「危ない」絵が含まれている。
春の夜 銀座
昭和9年
「大日本精神薄弱者協会」という障害者団体が、憲兵隊に呼びつけられて「「大日本精神」が「薄弱」なのは怪しからん。」というお目玉を頂戴した様な時代が、近づいている。学校でも「いじめられっこ」のケアをするばかりで「いじめっこ」のケアがさっぱりなのもそのあたりだ。
てやんでい、べらぼうめ
矢田掃雲
報知新聞連載/大正12年
現代大衆文学全集
矢田掃雲集
平凡社/昭和3年
柳橋吉野家の千代吉姉さんが、千鳥の袱紗を膝にもの思いに耽っている。
矢田掃雲わ全集の小序に
「澤村田之助」わ大正12年から同13年にかけて報知新聞に連載したものであります。御覧の通りの拙作でありますが、私の意圖わ、男女關係の種々相の中に、眞清水の如き一女性の純情を配し、純情が人を動かす力を描くつもりであったのです。と記している。「出来栄が餘りパッとしない」とあるのは、お叱り方面への当てつけで、しゃあしゃあと全集巻頭に配している。
然るに書中の場面に、役者と藝者の色模様が多いために、一部の君子人から大いに叱られ、又私自身の素行にも幾多の誤解を頂戴致しました。その中を辛抱して始めの計畫通りに書きつゞけたのわ我乍ら少々悲壮の感を禁じませんが、出来栄が餘りパッとしないので、閉口してしまいました。
昭和3年8月 矢田掃雲
「色模様」といったところで現今の少女雑誌の様に「一人えっちの仕方」「うれしい体位」など言ったものは当然含まれておらず、テレビのバラエティショウに較べても可愛いものだ。
然らば一部の君子人から、何を大いに叱られたかと言うと、当時は「世界最終戦争」と呼ばれた、第一次世界大戦のバブルから抜け切らず、増大する一方の軍事費によって"fiscal cliff"を転げ落ちて行く財政赤字に徴して、既に財政面から「非常時」は始まっていた。
加えて関東大震災によってPTSDに陥った国家統治の中枢は「精神論」を振りかざして「云う通りにしろ。」と国民を脅すしか無かった。「娘身売りの前に、村役場にご相談下さい。」と言ったところで、お上を当てにするものは無いまま「血税」で財政赤字を購う時代が来る。
それにもかかわらず、一部の国策に寄り添うもの達は、歌舞伎を楽しみ寿司をつまんで、座のはねた後の銀座通りのそぞろ歩きを楽しんでいた。仙台の飲屋街に於ける、昨年来の賑わいは全く変わっておらない様だ。今日の新聞では大間のマグロに1億5000万の値が付いたとやら。
笠松紫郎の刷り物には2.26事件に連なる、こうした時代の精神を活写した「危ない」絵が含まれている。
春の夜 銀座
昭和9年
「大日本精神薄弱者協会」という障害者団体が、憲兵隊に呼びつけられて「「大日本精神」が「薄弱」なのは怪しからん。」というお目玉を頂戴した様な時代が、近づいている。学校でも「いじめられっこ」のケアをするばかりで「いじめっこ」のケアがさっぱりなのもそのあたりだ。
てやんでい、べらぼうめ
澤村田之助
by dehoudai
| 2013-01-04 15:58
| ほん
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