2008年 09月 10日
無法者 |
テレビの人気番組に「水戸黄門」というのがあります。日本人の基本的な道徳律に訴えるところがあるのでしょう。黄門さま言うところの無法者は現代の「合法です」というのとはちょっと違う様です。
ザル法をついたホリエモン
証券取引法を逆手に取って私腹を肥やした「ホリエモン」に国民は怒りましたが、その証券取引法を作る側の役人が「村上ファンド」と称して同様に私腹を肥やしていたのには、ただあきれるばかりでした。これも日本人が共有する「株式会社」の姿と、米国などの「株式会社」が似て非なるものであるのに、証券取引法がその溝を完全には埋めていない、というところから来るのでしょう。
今でも暦の本には株の運勢欄がある様です。高島易断の開祖高島嘉衛門は「遠州屋」を名乗る幕府出入りの材木商でした。新橋横浜鉄道の工事に際し、本体工事請負を前提に、横浜高島町の埋め立て工事を請負い、明治政府が英仏からの資金を元に、本体工事を利権切り捨てで発注したため、身代限りとなり、転じて易者になったのだそうです。
「易」は古代中国の確率統計理論の様なところがあり、それはそれで面白いのですが、高島嘉衛門の如く、外国借款情報の情報戦に敗れたからといって、ゼイチクを鳴らして株の行く末を占うようでは、株主総会で約束した業績が実現出来ない、ということで社長が馘首される様な、英米式の証券取引にはついて行けないのが当然でしょう。
法律は国民が共有する道徳律を前提に作られているのではないでしょうか。これを無視する人が居れば、全ての法はザル法になってしまいます。
アーバンルネッサンス
最近のマンション紛争も、まちづくりに配慮しない民間分譲マンションなど、建築基準法・都市計画法の「想定の範囲外」だった、ということでしょう。関東大震災以降、我が国の集合住宅は長く公共公営住宅が主体でした。そこには我が国最高の英知が集められ、時には採算を度外視して未来の都市住宅づくりの実験が行われました。これは英国など欧米先進国の住宅性悪を規範にしたものでしたが、肝心な英国では「英国病脱出」を旗印にしたサッチャー政権下、公共公営住宅を放棄して住民に払い下げる、という荒療治が行われました。
するとたちまちにして我が国の住宅政策も右にならえとなり、国は集合住宅から手を引く方向へと方針を転換します。英国の「アーバンルネッサンスタスクフォース」を直訳した「都市再生本部」が組織され、都市住宅供給は民間マンションで、というドライブが始まります。住宅金融公庫もいつの間にか姿を消してしまいました。
日本の集合住宅は、一部都心の高級住宅を除き、関東大震災復興いらい長い間、住宅公団を旗頭とする、公共公益事業者の手で進められてきました。そこでは計画敷地の内外に渡って、まちなみあるいはまちづくりへの、充分な配慮がされるのが常でした。建築基準法、都市計画法などの諸法令は最低基準であるとし、それに甘んじることなく優れた住環境の追求がされてきました。
そこへもってきて建築基準法さえ守っていれば、立派な合法建築であると胸を張り、集合住宅計画史など知ったことではない、という民間マンション業者さんが出て来ると、これはもう建築基準法の「想定の範囲外」と言わざるを得ません。「まちなみへの配慮」を日本人の基本的な道徳律に付け加えることが出来るならば、、これをないがしろにする民間マンション業者さんは、成文法以前の「無法者」と呼ぶことが出来るでしょう。
by dehoudai
| 2008-09-10 15:48
| まちづくり
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