2008年 09月 08日
鰹の塩辛 |
ガニが泳いでいる。聞くとも無く聞いていると、「おとなしくなるで、ちっと氷を入れといてやらすか。」なるほど元気すぎてちょっと危険な雰囲気である。
以前、外国の大都市にある屋台で、逆の例を見かけたのを思い出してしまった。「タコの踊り食い」が名物の屋台では、座った客に「獲れたてだよ-」とタコを食わすのだが、見ているとタコにさりげなく焼酎を振りかけるのだ。するとぐったりしたタコが、それでも苦し紛れにぐにゃぐにゃと動くのだが、あれはタコにとっては辛かろう。明石のタコは威勢が良いので陸で敵に会うと「立って逃げる」そうで、こっちは美味そうだ。
苦しい想いをした生き物は食べても不味い、というのが江戸時代の人にとっては常識であったのだが、どことも知れぬ海で取れ、かろうじて死んでは居ない、という毛ガニに慣れた消費者には、舞阪港のガニの危険なことなど解るまい。
港にはシラス漁船がずらりと休んでいたが、市場の横に和歌山ナンバーの「世間の船」が数隻泊まっていた。聞き耳をしてみると、どこぞの大学のセンセイが、遺伝子操作かなにかで「サバをマグロにする」研究をしているのに使う、実験材料を獲っているのだと言う。
魚政の塩辛は1,500年以上も前からの安定した「加工食品」なのだが、今では世人が「マグロのトロ」に踊らされて、喜んでもらうためには、マグロの切り身に脂身を注射してトロにする、といった「加工食品」が隆盛を極めている。NTタイムズに地中海のマグロの水銀汚染が深刻だ、という記事が出ても、先進国の消費者の身勝手と、それをあおる国際的な食材流通システムからの見方に過ぎず、チリの鮭養殖で使われる大量の抗生物質が、付近の生態系を破壊してしまった、などというニュースに耳を傾ける人は少ない。
「食品の安全」という時に、一番手軽なのは伝統的な「食」なのではなかろうか。
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by dehoudai
| 2008-09-08 15:37
| たべもの
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