2017年 03月 11日
相思青花 |
陳舜臣
1984~1985
新潟日報他
陳舜臣中国ライブラリー8
集英社 2000
が日の出賞を受賞。この賞は読み出したら面白くて、朝になってしまった、という賞であります。まあ今回は6時前に読み終えて、二度寝しましたが。前回は「あの日パナマホテルで」でした。
陳舜臣さんは松本李清張さんと並ぶ推理小説の大家ですが、作風は全く違いますね。松本李清張さんは事件を通して心理・欲望など、個人を描くのですが、陳舜臣さんは教科書から人が抜け出して、歴史的事件を演ずるようなところがあります。
表題作は「恋愛小説です。」とおっしゃいますが、やはり歴史小説だと思います。この小説を書いた時60歳、松本清張さんが「けものみち」を上掲したのが54歳です。
友人の医者に言わせると「人生の全ては繁殖行為」だそうです。生物学では繁殖期が終わると、つまり寿命、ということで「ハイさようなら。」となりますが、人間の場合は人それぞれ、という感じがします。
若者はまたがったりまたがられたりして自分のコピーを作ろうとしますが、困ったことに人間には言葉があるので、生物的な繁殖期が終わっても、言葉で自分のコピーを作ることができます。考えの至らないものはそこに気がつかないので、50代になり、繁殖期が終わりそうになるとパニックを起こし、最後にもう一花ということで、若者にまたがってお縄を頂戴する者もおります。
警察署長さんぐらいなら、ああ、この人は国民が困っているのを助けるのでなく「オイコラ、俺の言うことを聞け。」という、かわいそうな人生を歩んできたのだろう、で済みます。ところが校長先生となると「自分の頭で考えないで、隊長が死になさいと言ったら、文句を言わないで死になさい。」という、明治の国民皆兵教育をやってきたことが判ります。教育勅語には良いことが書いてありますが、それを強要するのは憲法違反ですよ。
「相思青花」と「けものみち」は、陳舜臣さんと松本李清張さんが、繁殖期を卒業するについての卒業制作みたいな感じがします。
松本李清張さんは赤坂一の妓を落籍せたことがあるそうですが、「性欲は死んで灰になるまで。」というわけで、壮絶な繁殖期後を描いているのに対し、陳舜臣さんは同じ卒業制作でも「こうやって人類は続いてきたんですね。」という歴史の授業みたいな感じです。
by dehoudai
| 2017-03-11 15:07
| ほん
|
Comments(0)