2013年 11月 27日
KitchenBook |
ブティックデザイナーの台所の様に、デザイナーの主張が前面に出てはいけません。使う人に自分でデザインした、と思って頂ければ、成功でしょう。しかしこれはなかなか収入に結びつかないので、厳しい道でもあります。
西山夘三先生には「日本のすまい」という著書がありますが、これに「有名住宅10年後」みたいな調査が収められています。当時の花形デザイナーの設計した住宅が10年後にどんな使われ方をしているか、というものです。まあ最近のブティック住宅みたいなもの。
有名デザイナーに憧れて、設計を依頼して、あこがれの「作品」を手に入れた所で、日々の生活はなかなかそれについて行かない。そもそも有名デザイナーの先生が「理想の住まい方」をしていらっしゃるかどうかも怪しいもんだ。といった辺りを、実例で証明しています。
その辺りを戒めに、住宅を考えると、どうも台所・食堂辺りが住宅の中心になるのであります。夫婦といっても元は赤の他人だし、親子といっても子供が親の思い通りになるのも気持ち悪いし、と考えると家族とは「一緒に食べる人達」だとも言えます。
Mさんの家は近郊住宅地にあります。奥行きダブル幅のアイランドキッチンは、お嬢さん達が大きくなるまで活躍したことと思います。
木製ドアのキャビネットには、天然素材のカウンターが良く合います。花崗岩は堅くて瑕がつきにくいのですが、反面ガラスなどをぶつけると、割れやすい、ということもありそうです。
大理石は柔らかいのですが、お酢に弱い、醤油が染込む、ということでキッチンカウンターには向いていません。人造大理石も飽きがくるのが心配です。最近は花崗岩かステンレス、というケースが多いです。
座敷など個人住宅にフォーマルな部屋を作っても、使うのは年に何回、という時代なので、和室で使い出があるのは「茶の間」だと思いますが、なかなかは作る人が居ません。
Kさんの家は3世代住宅。ではありますが、歩いて3分の所にもう一軒お子さんが住んでいるので、常に大家族状態です。
アイランドキッチンと言っても、この場合は壁付のフルセットのキッチンの手前に、シンク付の調理台を据えてあります。高さも少し低くして「おばあちゃんのお菓子工房」といった構え。お菓子作りの調理台は「魔法のステージ」の様でもありますが、上手く行っているのは、ご亭主がグラス片手に奥の鍋の管理をしているからでもあります。
隠居屋のダイニングキッチンなので、アイランドの最小寸法みたいな所があります。小人数だとなるべく狭い方が落ち着く、ということがあるかもしれません。
2階で大切なのはデッキ。外に物を置くスペースがあると、食べ物がぐっと豊かになります。
子供が居なくて2人暮らしと言うと、そう、いつもは適当に済ませておいて、誰かが来ると小料理屋になる、というダイニングキッチンです。「へい、らっしゃい。」「良い酒持って来たよ。」とやるには業務用のレンジが活躍します。このお宅にはビアガーデンもあるのです。
高齢の母上を見守る為の住宅です。そんな歳になると若者の様に単なる「夢のキッチン」ではなくなります。「私は片付けはあまりしません。」といった、毅然とした態度が成功の元です。
一見普通のキッチンに見えますが、バッックカウンターの裏がキッチンクローゼットになっています。「私は片付けは全くしません。」であっても、ぐしゃぐしゃがダイニングからは見えない仕掛けです。
ここまでやって高通気高断熱で50万円/坪前後となると、国産のお高いシステムキッチンには手が出ません。次の例は別格。全てムクのフローリング、全てムクの家具を入れて100万/坪でどうだっ。
Wさんは貴族院議員川上嘉市氏が、国会本会議場の内装をヤマハに命じた頃の家具職人、静岡県の名工でもあった御父君にぶん殴られて育った家具作家。
今や特注家具の時代ではない、ということでご子息を後継者にせず、積んであった銘木を隠居屋で使っちゃおう、という計画でした。
いや、全く、こんな材料があるもんですね。というムクのローズウッド厚20mmのドアのキッチンセット。カウンターには長年温めて来たであろう、割れの入ったチークが象眼を施して使われています。
by dehoudai
| 2013-11-27 17:36
| まちづくり
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