2013年 11月 26日
高通気高断熱 |
「洋風住宅」「和風住宅」という言葉があるが、あまり技術的な言葉ではなさそうだ。本格和風は建築基準法に筋交が取り入れられて絶滅してしまったと言えよう。
住宅地の近代
米国では都市計画予算の75%が広報費用だそうだ。お出入りコンサルに立派な報告書を作らせて、書棚の肥にするだけでは、まちづくりは出来ないのだ。フランクフルト中心部の地下広場は「都市計画広報館」になっていた。
市民の誰もが「わが街」への想いを深めるのと、史実をねじ曲げた「ゆるキャラ」を広めるのとでは、大きな違いが出て来る。
住宅設計でも様々な収穫があった。構造用材を輸入したこともあったが、躯体工事事業者がストックしており、横入れするのも面倒だ。
1992年の地球温暖化に関する国連会議以降、先進国と途上国の溝は一向に埋まらないが、私が住宅設計で得たデザイン指針は
「高通気高断熱」だ
1990年以降設計した北米型枠組壁構法の住宅は、現在でも先端規格と称するメーカー仕様を上回っている。 ただし1973年に始まったオイルショックの後で、米国の住宅の標準仕様になった2重ガラスの窓用サッシは、今では国産化されて安価に使うことが出来る。
一時高機密高断熱が喧伝されたが、これなど「文明開化」の悪い例のひとつだろう。
ヨーロッパ・北米西海岸の様な夏期は高温低湿、冬期は低温高湿という所では高機密高断熱が快適だが、
日本の様な夏期は高温高湿、冬期は低温低湿という所で、西岸海洋性気候に根ざした技術を、無批判に移入されたのでは、たまったもんではない。
多摩ニュータウン入居時のダニ騒ぎの教訓は活かされていない。
床と壁
構造設計で馬鹿馬鹿しいのは「筋交」だろう。関東大震災の頃、北米の木造住宅では筋交+木摺による壁構造が一般的だった。震災後に木造住宅の構造基準を定めるにあたって「外国の先進事例」を、シロートが国法にしまったので、その後和風構造の伝統は退化して行った。桂離宮でも見習ったらどうだろう。
当時筋交に異議を唱えたのは、帝国ホテル設計の際、米国に滞在し、北米の住宅建築に造詣の深かった遠藤新だった。しかし自分の信ずる所を進み、異論を唱えることを怖れない遠藤は学会中枢に厭われ「外国の先進事例」を、シロートが取り違えた構造基準は、現在に至まで間違いを正そうとするものが居らず、放ったらかしだ。
1923年11月「婦人の友」 筋かいボート不適当
建築家遠藤新作品集 遠藤新生誕百年記念事業委員会編 中央公論美術出版 平成3年
キッチンキャビネットは現在でも輸入する経済価値がありそうだ。日本のキャビネットメーカーは、1970年代にラワンの2.7mm化粧合板を張った、フラッシュドアによるキャビネットの為の工場に投資した。
これと対照的に北米のキャビネットメーカーは、新建材の出る前に設備投資を終わっていたので、ムクの木製ドアなどは安価に出荷出来る。
現在主流のMDFパネルも、そうした工場の為に開発されたものだろうから、追加の設備投資も、ベニアのドアを使っていた製造設備を新しくするのに較べ、楽だったのだろう。
1949年に日本住宅公団が、キッチンキャビネットの標準仕様を定めてから、現在までに日本人の身長は100mm程延びているが、当時の調理台の高さが800mmであったのに対し、850mmの調理台が製品化されたのは最近のことだ。
身長に合わない調理台を使い続けたのが、現在の日本における主婦の腰痛の原因の、かなりの部分を占めているのではなかろうか。北米のキッチンカウンターは36インチ3/4が標準で、これが大方の場合調理には快適な様だ。
奥行きが650程度のシングル幅で、水返しの無いアイランドも、絵柄としては奇麗なのだが、使い物にならない。水が反対側に跳ね飛んでびしょびしょになる。タワシ・洗剤などが丸見えだ。
調理台と同じ高さに埋め込んだドロップインクックトップも同様。こちらは逆にゴトクの高さが調理台より50mm近く上がるので、背の高い寸胴鍋など、高温になると危険極まり無い。良く使う鍋の縁が、まな板と同じくらいに来るのが理想的だ。 ご亭主はドロップインクックトップがお気に入りだったが、こちらの奥様はあんなものは高いだけで、量販店で売っている5万程のガスレンジで充分だとおっしゃる。確かにドロップインクックトップだと、安いものだと15万円程、様々なオマケ付だと25万円から35万円もする。 子育て時期には業務用のレンジをお勧めしている。これだと弁当を含めた朝食の準備時間が1/2で済む。しかも家庭用のドロップインクックトップだと5人x10年で「お買い替え」となるのだが、業務用なら150人x5年でも、ゴトクとバ−ナーだけ取り替えれば良い。当家では6人が3人になった20年目に取り替えた。
問題は御家庭用鍋釜の柄が全て焼けてなくなってしまうこと。5年もすると業務用の鍋に入れ替わってしまう。
私は無煙ロースターが嫌いだ。どうしても無煙ロースターの焼き魚を食べたければ、コンビニで買えば良い。しかし大方の家事管理者は網で魚を焼くの嫌いだ。小料理屋の焼き魚が出来るのだが、家中魚の匂いが充満する。あれは単に加熱ではなく、加熱+燻煙が美味しさの秘密だ。
隠居屋なら量販店の5万が汚れたら、買い替えれば良い。若いうちは「夢のマイホーム」なのだが、隠居屋になると「賢い消費者」だ。
KitchenBook
高通気高断熱
20年前 30年前 40年前2 40年前 50年前
1949年に日本住宅公団が、キッチンキャビネットの標準仕様を定めてから、現在までに日本人の身長は100mm程延びているが、当時の調理台の高さが800mmであったのに対し、850mmの調理台が製品化されたのは最近のことだ。
by dehoudai
| 2013-11-26 13:35
| まちづくり
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