2012年 09月 13日
故郷 |
120913故郷
故郷
水上勉
京都新聞他 1987-1991
集英社 1997
バブルの頃の日本の「故郷」の姿を描いている。出身が福井県大飯郡であり、大飯原発、高浜原発が本書の背景にも聳えている。日本の繁栄が何と引き換えに実現したかを「電源立地目線」で描いている。連載と単行本の間がちょうどバブル期に当たるのだが、それから現在に至る20年余の「故郷」の変貌も激しい。
著者はそれまでに
霧と影
水上勉
河出書房 1959
新潮文庫 1966
飢餓海峡
水上勉
週刊朝日 1962
新潮文庫 1969
の二作を著しており、本書はいわば後日談だ。電源立地の向こうには舞鶴軍港と大湊要港部が見える。「大量消費」と「戦争」の違いはあるものの、電源立地と軍隊の立地には、不思議な共通点があり「電源立地目線」からは、東京からとは違う近代日本の骨格が浮き彫りにされる。
若狭・丹後・下北と場所は変わっても「故郷」が近代化によって「のっぺらぼう」になって行く様は全国共通だろう。本書の成った頃には「のっぺらぼう」はまだ、街道沿いの「ドライブイン食堂」までで、葬式はかろうじて村人の手で、昔通りに行われていたものが、今日では村の葬式まで「のっぺらぼう」の仕切るところになっているのではあるまいか?
水上勉さんの世代では話題は「ジャパゆきさん」だったものが、2012.9.14のBloombergには、次の段階の話が出ている。コールセンターなど故郷での就業機会が増えるに従い、低賃金労働での人材を海外に頼ろうとする医療現場から、来日した技術者が帰国する傾向が増えているというのだ。産業近代化が世界に広まれば、これまで「収入」をエサに英語を世界中に広げて来た米国とて同じ課題に直面するはずだ。
故郷
水上勉
京都新聞他 1987-1991
集英社 1997
バブルの頃の日本の「故郷」の姿を描いている。出身が福井県大飯郡であり、大飯原発、高浜原発が本書の背景にも聳えている。日本の繁栄が何と引き換えに実現したかを「電源立地目線」で描いている。連載と単行本の間がちょうどバブル期に当たるのだが、それから現在に至る20年余の「故郷」の変貌も激しい。
著者はそれまでに
霧と影
水上勉
河出書房 1959
新潮文庫 1966
飢餓海峡
水上勉
週刊朝日 1962
新潮文庫 1969
の二作を著しており、本書はいわば後日談だ。電源立地の向こうには舞鶴軍港と大湊要港部が見える。「大量消費」と「戦争」の違いはあるものの、電源立地と軍隊の立地には、不思議な共通点があり「電源立地目線」からは、東京からとは違う近代日本の骨格が浮き彫りにされる。
西洋人は日本が平和な文芸に耽っていた間は、野蛮国と考えていたものである。ところが日本が満洲の戦場に大虐殺を行い始めてからは文明国と呼んでいる。(中略)もし文明ということが、血腥い戦争の栄誉に依存せねばならぬというならば、我々はあくまでも野蛮人に甘んじよう。という岡倉天心先生も福井の人だ。
若狭・丹後・下北と場所は変わっても「故郷」が近代化によって「のっぺらぼう」になって行く様は全国共通だろう。本書の成った頃には「のっぺらぼう」はまだ、街道沿いの「ドライブイン食堂」までで、葬式はかろうじて村人の手で、昔通りに行われていたものが、今日では村の葬式まで「のっぺらぼう」の仕切るところになっているのではあるまいか?
水上勉さんの世代では話題は「ジャパゆきさん」だったものが、2012.9.14のBloombergには、次の段階の話が出ている。コールセンターなど故郷での就業機会が増えるに従い、低賃金労働での人材を海外に頼ろうとする医療現場から、来日した技術者が帰国する傾向が増えているというのだ。産業近代化が世界に広まれば、これまで「収入」をエサに英語を世界中に広げて来た米国とて同じ課題に直面するはずだ。
by dehoudai
| 2012-09-13 15:57
| ほん
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