2011年 09月 27日
ひらぶん |
暗号ではなく、平文で情報交換をしているのだが、船団の中でも近所の数隻にしか内容が解らない。再現してみると次の様なものだ。
「まさひろー、かーちゃんげんきか?」
「向かいのマリちゃんにゃかなわないっす。」
「だろーなー。前か後ろか?」
「前の左じゃないっすか。」
「いってみる?」
猥談をしている様に聴こえたものが、いきなり船団の中から数隻がフルスロットルで走り出すと、次のポイントへ網を降ろす。魚群を知らせていたのだ。向こう三軒両隣に暮らして、朝晩顔を合わせていれば、平文で暗号が交換出来る。
軍人さんは「全軍に機密指令を。」という発想をしなければならないので、暗号を使わざるを得ないのだが、これは大変だ。真珠湾攻撃の折の大日本海軍の暗号は、IJN25Bとして既に解読されており「ロ-マ時代と変らぬ簡単な暗号で、使われる漢字の方が難しかった。」という人もいる。
昭和18年7月、ベルリン駐在の野村直邦海軍中将が潜水艦で本国へ微行する折、外務省は暗号を避けて鹿児島の同じ村の出身者に、平文の方言で連絡させたことが知られる。村内のものしか解らないことを平文で話す方が、機密保持の為には暗号よりも安全なのだ。
震災で被災した漁業者が、集団移転でなければ漁業再生は出来ない、と考えているのも、朝晩顔を合わせて情報交換をしなければ、漁業という高度情報産業は成り立たないのだろう。漁業者にとっては海軍の暗号だの、クラウドサーバの機密保持だのは、子供の遊び程度にしか見えないのではなかろうか。
千年以上前から「海族衆」が沖に逃げてしまえば、歴史学者・民族学者が束になって掛かっても、手がかりは無い。そんなわけで「海族衆」の情報は陸に伝わること無く、磐城の鉄がどのようにして都に運ばれたか、後醍醐天皇第四王子宗良親王が熊野を脱する時に何故「奥州宇多の湊」を目指したかも、謎のままだ。
by dehoudai
| 2011-09-27 16:03
| まちづくり
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