2010年 10月 21日
上野介とスティーヴ |
ジパングの艦-小栗上野介
吉岡道夫
光人社 2001
幕末明治を観察するに、あちこちで目にする人物だったので、読んでみた。筆者は大映出身、ということで、そのままテレビの時代劇の原作に使えそうだ。幕末同様国家崩壊の秋、面白い場面がいろいろと用意されている。
話は横須賀ドックへと収斂していくのだが、そこにいたるまでの幕府・諸藩の有様が、現在と全く同じ、というのが面白い。
対馬へのロシア海軍の上陸は、現在の尖角問題であって、大方の旗本幕閣諸候は先日「自分の首が惜しかった」那覇地検のスタッフ程度の腑抜けであったことが知れる。
新聞の話が出て来るのは、後に親友栗本瀬兵衛も関わるのだが、著者は福沢を相手に「公儀が口出しをしてはニュ−スペーパーが死んでしまう。」と言わせている。現在の日本で、情報統制が議会ではなくて、官僚によるマスコミの許認可権に牛耳られていることも、思い浮かんだのだろう。
福沢の弟子である徐載弼君などが始めた「独立協会」は独立門も建てたが、新聞発行が大きな事業だった。ハンギョレ新聞の如き、権力から見れば「目の上のタンコブ」が存在する韓国は、この点では「大本営発表」の時代と変わらぬ日本に較べて、民主化が進んでいる。
「事業仕分け」で江戸城内外を締め上げる話。現在同様ふくれあがる財政赤字を埋めていたのは、三井などへの「御用金」申し付けだった様子など。小栗の如く御用商人の「プライムレート」と「サブプライムレート」の鞘稼ぎへ大鉈を振るえば、現在の日本の内需も上向こうというものだが、小栗の様な勘定奉行が居ないので、「消費者金融」を「市中銀行」が吸い上げてオシマイというのが、現在の日本が幕末以下であることを示している。
筆に力が入っているのは通貨問題。神奈川条約後の日本から流出した金が、一千万両程だそうで、これに華府で小栗が釘を刺した話が載っている。今日の世界の大勢は、日本が倒産するまで円を揉み上げよう、という勢いなのだが、小栗の様に、釘を刺そうというものが誰もいない。
近年の勘定方で、FRBへ乗り込んでタメ口をきけたのは、柳澤伯夫くらいでは無かろうかと思うだが、「女は生む機械」という統計学上の比喩を捕まえて、自分の目先の出世の為に、有能な閣僚の脚を引っ張るやつがいるのも、幕末とちっとも変わらない。
変わったのは画面でスティーヴ君が獅子の絵を見せながら、「新型ノートでソフトをダウンロード。」とやっている横に、1ドル81円を切ったと出るくらいのものだ。ストレージが64GBというのは、ノースカロライナのナニを使え、ということだな。出来もしないうちから床面積を倍に、なんて話が出て来るところ、上野介もスティーヴも「誰も見たことも無いものを作る。」のが好きな様だ。
吉岡道夫
光人社 2001
幕末明治を観察するに、あちこちで目にする人物だったので、読んでみた。筆者は大映出身、ということで、そのままテレビの時代劇の原作に使えそうだ。幕末同様国家崩壊の秋、面白い場面がいろいろと用意されている。
話は横須賀ドックへと収斂していくのだが、そこにいたるまでの幕府・諸藩の有様が、現在と全く同じ、というのが面白い。
対馬へのロシア海軍の上陸は、現在の尖角問題であって、大方の旗本幕閣諸候は先日「自分の首が惜しかった」那覇地検のスタッフ程度の腑抜けであったことが知れる。
新聞の話が出て来るのは、後に親友栗本瀬兵衛も関わるのだが、著者は福沢を相手に「公儀が口出しをしてはニュ−スペーパーが死んでしまう。」と言わせている。現在の日本で、情報統制が議会ではなくて、官僚によるマスコミの許認可権に牛耳られていることも、思い浮かんだのだろう。
福沢の弟子である徐載弼君などが始めた「独立協会」は独立門も建てたが、新聞発行が大きな事業だった。ハンギョレ新聞の如き、権力から見れば「目の上のタンコブ」が存在する韓国は、この点では「大本営発表」の時代と変わらぬ日本に較べて、民主化が進んでいる。
「事業仕分け」で江戸城内外を締め上げる話。現在同様ふくれあがる財政赤字を埋めていたのは、三井などへの「御用金」申し付けだった様子など。小栗の如く御用商人の「プライムレート」と「サブプライムレート」の鞘稼ぎへ大鉈を振るえば、現在の日本の内需も上向こうというものだが、小栗の様な勘定奉行が居ないので、「消費者金融」を「市中銀行」が吸い上げてオシマイというのが、現在の日本が幕末以下であることを示している。
筆に力が入っているのは通貨問題。神奈川条約後の日本から流出した金が、一千万両程だそうで、これに華府で小栗が釘を刺した話が載っている。今日の世界の大勢は、日本が倒産するまで円を揉み上げよう、という勢いなのだが、小栗の様に、釘を刺そうというものが誰もいない。
近年の勘定方で、FRBへ乗り込んでタメ口をきけたのは、柳澤伯夫くらいでは無かろうかと思うだが、「女は生む機械」という統計学上の比喩を捕まえて、自分の目先の出世の為に、有能な閣僚の脚を引っ張るやつがいるのも、幕末とちっとも変わらない。
変わったのは画面でスティーヴ君が獅子の絵を見せながら、「新型ノートでソフトをダウンロード。」とやっている横に、1ドル81円を切ったと出るくらいのものだ。ストレージが64GBというのは、ノースカロライナのナニを使え、ということだな。出来もしないうちから床面積を倍に、なんて話が出て来るところ、上野介もスティーヴも「誰も見たことも無いものを作る。」のが好きな様だ。
by dehoudai
| 2010-10-21 13:18
| ほん
|
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