2009年 05月 20日
鰹はどう死にたいか |
群れの先頭から異様な悲鳴が上がり、急速に群れの向きが変わる。向きはさらに、さらに変わる。眼が回ると思うと、なにかオリの様なものが見える。廻りがきゅうくつになって来る。魚体同士がぶつかりあう。狭い。苦しい。苦しいので必死にひれを動かすと、廻りの仲間も同じことをしているので、海水中の酸素がどんどん減って行く。苦しい。ひと思いに殺してくれ。
巻網は近代技術なので、一匹づつ苦しみを与えない様に昇天させる、なんて手間のかかることはしないで、網を上げれば適当に死んでくれる、というやり方をしているのでは無いだろううか。近年米国から世界に発信された「大量破壊兵器」なんてキーワードと似ている気がする。これに対してケンケンとよばれる、昔ながらの一本釣りの漁法は、真剣勝負による武芸者の一騎討ちに似ている様な気がする。
西欧社会で「動物をと殺するには、なるべく苦しまない方法を取るのが、動物愛護精神だ。食べ物を殺すのに不必要な苦しみを与えるのは、生物虐待である。」などというの議論の高まったのは、20世紀も後半になってからの様だ。それも人間だけが創造主によって他の生き物とは違い、「神の形に似せて作られた」という、傲慢の上でのことだ。
これと対照的に我が国では、人間も他の生き物も同じ生き物であり、生き物を虐待すれば、「バチが当る」ことは、太古からの常識だったのではなかろうか。矢田挿雲の蘊蓄本「江戸から東京へ」では、生け簀の鯛は江戸前の鯛と「食べ物は同じだが、捕まってから幾日も生け簀に飼われ、「今日は殺されるか、明日は殺されるか、」と心配して気が病んでいるので、美味しくない」と、動物虐待は復讐を受けることを、我々日本人が知っていたことが紹介されている。
巻網の鰹が安いのは、アウシュビッツの様な大量破壊の断末魔の苦しみの味がするからであり、ケンケンのもち鰹がうまいのは、武芸者の一騎討ちで昇天した魚の魂がまだ生きているからだ。
これまでの記事
090521 冷蔵庫?
090520 鰹はどう死にたいか
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020623 今年の鰹
010924 もち鰹あります
by dehoudai
| 2009-05-20 23:07
| たべもの
|
Comments(3)
知り合いのシェフがウサギの絞め方を伝授するというので、包丁研いで待っていたら、なんのことはない、パツンとアタマを切り離してぱっと吊した。「さあ死んでくれよ」なんておまじないを唱える間があってはいけない、おびえた彼らは死ぬ前から筋肉が硬直して、死後マズイ、とのこと。
野ウサギも同様、暗闇の原っぱに自動車で乗り付け、しばらく静かに待ってからぱっとヘッドライトをつけ、反射するウサギの目めがけて走りより、イッパツ頭をコツンとやって、すぐグサッ、なのだそうです。
「だいたいまな板の前に味は決まっている」らしい。
野ウサギも同様、暗闇の原っぱに自動車で乗り付け、しばらく静かに待ってからぱっとヘッドライトをつけ、反射するウサギの目めがけて走りより、イッパツ頭をコツンとやって、すぐグサッ、なのだそうです。
「だいたいまな板の前に味は決まっている」らしい。
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kuunuu
at 2009-05-22 12:32
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生きている伊勢エビをもらったことがあります。大喜びしていると、「空輸中にストレスで相当やせたはず」と言っていました。飲み屋や料理屋の水槽や生け簀に入れられた魚もストレスでやせてるんだって。イヤな汗かいたり(笑)?
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dehoudai at 2009-05-22 23:45
あれは網にかかった時でさえ、具足に比べて中身がパンダの着ぐるみと、中のバイトの学生くらいの落差がありますから、、、
最近世界の海で、猫と一緒に「竜虎鍋」に入れる中国商社が、2倍付けするので日本商社は勝てないそうです。
最近世界の海で、猫と一緒に「竜虎鍋」に入れる中国商社が、2倍付けするので日本商社は勝てないそうです。