2009年 04月 13日
筬欄間のメンテナンス |
ほこりを払って硬く絞った雑巾で軽く拭い、さて格子の隙に積もった六十年の埃ををどうやって取ったものか、考えあぐねてしまった。絵筆の細いので払おうとしたが、腰が弱くて、上手くいかない。そのまましばらく置く事にした。
事務所に立てかけて朝晩眺めていたのだが、ある日、歯をせせりながら、あっと気付いた。このところ奥歯に物が挟がると、歯ブラシでは上手く取れず、最近流行の歯間ブラシを愛用しているのだ。何のことは無い、歯間ブラシというのは、正に筬の歯の間を磨くために、作られた様なものではないか。
直ちに試してみると、面白い様に上手くいく。格子の間を歯間ブラシで磨くと、分厚く積もった六十年の埃が、ぶわっと土煙の如く取れて行くのだ。筬欄間の掃除に困っている方は是非お試しあるが良い。
筬欄間の埃を払いながら、「さび」について考える。日本文化の真髄のひとつが「わびとさび」と言う時の「さび」だ。
「わび」の方は「侘び」とも綴る様で、「お金を出せば良い物が手に入る、というのは間違い。」と考えれば良いだろう。以前、あるホテルで高価な大理石を使っていながら、どう見てもプリントベニアにしか見えない内装があり、「デザインが悪いとこうなる」という参考にさせてもらっていた。現在でも迷惑メールの何分の一かは「レプリカウォッチ」のコマーシャルだ。「センスが良ければ、レプリカウォッチも本物に見える。」と言う訳なのだろうが、元々「センスは無いが、お金ならある」と言う人達に御奉仕しているブランド商品の、価値の由って来る所以に、気付いていない人が多いのだろう。
「さび」は「侘び」からの連想で、「寂び」と書かれる事もある様だが、元々は「錆び」だろう。金属のさびから来る通り、経年変化に由る変色だ。長い間愛着を持って使い込んだ物は、古びた色合いも美しく感じられる、というところから来ているのではないかと思う。暮らしぶりが美しければ、使う物の古び方も美しい、という感性が利休居士以来の、日本人の美意識にはある。そして黄金の茶室を誇った豊臣秀吉の様に、権力者には「わび」も「さび」も解らないのも、権力者であるが故のペナルティーであることも、東西古今を問わない。
現在はコンピュータ加工で作られていそうな筬欄間なのだが、60年前には全て職人の手仕事で作られていた物だと思う。構造的にエアフィルターに近いので、60年に渡って、埃を付着させ、室内の空気をそれだけ浄化して来たと思われる。「住む」は「澄む」から来ているのでは、と言ったのは確か谷川俊太郎さんだ。そうであれば、かっての日本の住居は昨今言われる「シックハウス」とは正反対の所から発想が始まっているのだ。そうした建物の遺伝子を組込む事で、住まいが落ち着く場所になるのではと、日頃考えている。
by dehoudai
| 2009-04-13 14:54
| まちづくり
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Comments(3)
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kuunuu
at 2009-04-14 14:23
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な、なんて美しい欄間! 筬って、織機の部品ですよね。横糸を押す部分。歯間ブラシというのは素晴らしい思いつき。私は一瞬、竹のささらはどう?と思ったよ。ある意味歯間ブラシですが。
この欄間をどのように使うのか、ぜひ見たい。わくわく。
この欄間をどのように使うのか、ぜひ見たい。わくわく。
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dehoudai at 2009-04-15 09:31
筬欄間の美しさと言うか、安らぎのひとつは、格子の巾と深さが1:4程と狭く深いので、斜めの視野をシャットして、正面しか見えない事です。「守られている」感じがします。
「劇的ビフォーアフター」でやる様に様に「転用」だと、こうした本来の機能を使えない場合もあるので、今回は欄間を作ります。
「劇的ビフォーアフター」でやる様に様に「転用」だと、こうした本来の機能を使えない場合もあるので、今回は欄間を作ります。
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kuunuu
at 2009-04-15 11:45
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完成したら、写真を見せてください。